100マイルを4度走破した女性ランナーが、キャッチレスピアスにハマった理由

今回の主役は、100マイル(約160km)のトレイルランニングレースを何度も完走した経験を持つ中嶋友里さん。 いちランナーとしてだけでなく、“ランニングタレント”と自ら名乗り、走ることで得た気づきやノウハウを発信。 いま、多くのランナーたちから支持を集める存在です。
そんな彼女のライフスタイルと、バックレスとの関係に迫ります。


「いつでもナチュラルに、オンとオフの差をつけない」

SNSを使った情報発信をはじめ、さまざまなランニングメディアへの出演や、マラソン大会のトークイベントでの登壇、 スポーツ量販店の主催イベントへの出演などなど、ランニングタレントとしての友里さんの活動は多岐に渡ります。 インスタグラムのフォロワーは実に5万人以上。さらに、1年ほど前からは、ポッドキャストやYouTubeなどを活用して、 自らのランニング体験を配信しています。

「ちょうど1年前までは、会社員として働きながら、二足のわらじで活動していました。 おかげさまで、多くの方々から声をかけていただくようになり、ランニング関係のお仕事が増えていく一方で、 次第に本業との両立が難しくなってきたんです」。

多忙のあまり体調にも変化が現れてきたこともあって、どちらを取るべきか悩んだ末、 “ランニングタレント”一本で活動していく決意を固めます。

「けっこう勇気がいる決断でしたね。そういった前例がなかったこともあって、恥ずかしくて最初は周りにも言えなかったんです。 だって『いきなりそれ始めるの?』みたいな感じじゃないですか? でもそんな時に、フリーでスポーツMCとして活動している友人から『何かになりたければ、名乗ってしまえば、もう今日からソレだから』って 言われて決心がつきましたね。夫の理解があったことも幸運だったと思います」。
結果、それまで以上に大会やイベントで声かけてもらえることが増えた、という友里さん。 「ラジオ聞いてます」「インスタ見てます」「いつもどの辺を走っているんですか」などなど、 自分が思っている以上にたくさん人から応援してもらっていることを実感するようになったと言います。

「仕事する上で一番大切にしていることは、オンとオフの差をつけないようにすること。 取り繕っても自分の首を締めるだけなので、いつでもナチュラルに、いちランナーとしての目線で話すことを心がけています。 それと、家族との時間を大切にすること。一番身近な人に応援してもらえるように、ライフスタイルのバランスを考えるようにしています」。

「淡々と、粘り強く、ゆっくりでも絶対に止まらない」

そんな友里さんのライフスタイルのベースにあるのは、言うまでもなく走ること。 ホームグランドである茨城県つくば市は、日本百名山に数えられる筑波山やそれに連なる宝篋山などのトレイルコースのほか、 ランニング向きの公園やフラットなロードが豊富なエリアです。


「だいたいは早起きして毎日走っていますが、レース後や疲れを感じている時は無理せず休むこともあります。月に大体300kmくらい。 多いときは450kmくらい入る月もありますね。 近所をひとりで走ることもあれば、高校の同級生たちと山を走ることもあります。ロードとトレイル、半々くらいだと思います」。

ランニング歴は今年で9年目。走り始めてから半年後にはフルマラソン、さらに半年後にはウルトラマラソンにチャレンジし、 いずれも完走。そして2年前には、国内最高峰の100マイルレースであるUTMF(ウルトラ・トレイル・マウント・フジ)を走破しました。

「30km、40km……、80kmって、数字が積み重なっていくじゃないですか。 80kmだとまだ油断しちゃいけないんですけど、120kmまで来ると終わりが見えてくる、 みたいな。あの“アドベンチャー”な感じがいいんですよね」。

彼女をよく知る人によれば、「スタートからゴールまで、ずーっと笑顔なのがすごい。 どんなレースでも、ニコニコしながら帰ってくる」とか。

「距離に対する抵抗は特にないんです。160km走ってくださいと言われれば、『わかりました』みたいな(笑)。 サッカーとかバスケみたいにハードコンタクトがあるスポーツは苦手だけど、ランニングは個人競技だし、 少なくとも私は誰とも競わない。唯一こだわりがあるとすれば、ゆっくりでも絶対に止まらないこと。 淡々と、粘り強くというのが、性格的にも合っているのかもしれません」。

「100マイルのときもバックレスをつけて走りました」

ランニングタレントとして活動する友里さんにとって、走るときのスタイルも大事な要素。 近年はファッショナブルなウェアやシューズが増え、それぞれの個性でコーディネイトすることが、 ランニングの楽しみのひとつとして定着しています。

「SNS用に自撮りしたり、誰かと写真を撮ったりする機会が多いので、なるべく明るい色のウェアにするようには心がけています。 同じように髪型やメイクも工夫しますし、ネックレスやピアスなどのアクセサリーも必ずつけるようにしています。 100マイルのときもバックレスをつけて走りましたよ」。
バックレスに出合う前は、いわゆるキャッチの付いた普通のピアスをつけていたそう。

「普通のピアスだと、気づいたらなくなっているんですよ。その点、バックレスのキャッチレスピアスは、 途中で落としてないかいちいち確認したりするストレスがないからいいですよね」。

友里さんの言うとおり、100マイルレースは “アドベンチャー”。30時間以上、眠らずに山の中を駆け巡る、過酷な冒険です。

「だから、着けているのをほぼ忘れています(笑)。エイドステーションで横になるときでも、気にせず倒れ込める。 あと個人的な感想ですけど、なんか丈夫な気がしません? フープのやつとかでも曲がったりしないですし、それが不思議だなって」。

なるほど。100マイラーから言われると、妙な説得力があります。

「種類も多いし、組み合わせて着けてもかわいいから、ついつい買い足したくなっちゃいますよね。 そういう意味では私にとって、ランニングシューズやソックスと同じなのかな」。

シーンを選ばずストレスフリーで着けていられるキャッチレスピアスは、 オンとオフを区別しない友里さんのスタイルにはピッタリなのかもしれません。

「ランニングという小さな“ご褒美”を積み重ねていく」

「ランニングを日常に、っていう言葉をずっと大切にしていて、それは私とって大きなテーマでもあります。 ランニングを始めた頃は、早起きして家の周りを走ることや仕事終わりのジョギングが、ひとりだけの特別な時間だったんです。 そういう小さな“ご褒美”を積み重ねていくことで、走ることがどんどん楽しくなっていくと思うし、 そんな私の日常を発信することで、ランニングを好きになる人が増えていったら嬉しいですね」。

実はこの春から、イギリスに移住することになったという友里さん。不慣れな場所に生活拠点を移すことへの不安は当然あるけれど、走る習慣は変わることなく続けたいと言います。
「まずは朝のジョギングがてら、走るコースを少しずつ開拓していきたいです。ランニングなら遠くまで行けるので、観光しながら走るのもいいですね。 もちろん、山にも行ってみたいです。ランニング仲間も、日本と同じように、どんどん繋がっていけたらいいなと思っています。その前に英語をがんばらないと、なんですよ」。

日本でも、海外でも、ロードでも、トレイルでも、100マイルレースでも、毎日のジョギングでも、彼女にとってはそう変わらないかもしれません。 『フォレストガンプ』に心を動かされて走り始めたという“あの日”から。





■プロフィール
中嶋友里
YURI NAKAJIMA
1986年生まれ。茨城県つくば市出身。
SNSによる情報発信を筆頭に、イベントやメディアへのモデル出演など、ランニングタレントとして幅広く活躍中。
自身もランナーとしてさまざまな大会に参戦し、UTMFをはじめとする100マイルレースを4度も完走。この春、3度目のUTMFに挑戦する。

text by Soichi Toyama
photo by Akane Watanabe